アイルランド研修(2024)

「地理的、歴史的に分析したアニメ」 2025年1月9日

 今日、アニメを語る際に海外の動向は切っても切り離せないのは明白であり、理解するのも一筋縄にはいかない。日本でヒットしたアニメが、必ずしも海外で同じく人気を得られるとは必ずしも断言できない。「推しの子」が良い例である。そこには必ず何か傾向があるのは明白だろう。このことを前提に、1月9日について語っていこうと思う。

 ニューロスという街に、ダンブローディー飢饉船のツアーに参加するために向かった。その道中に何ともヨーロッパ風な田舎風景と相対し、綺麗なケスタに広がる畑や囲いを堪能した。あまり綺麗に見えないかもしれないが参考程度に写真を載せる。

 この風景、誰しも一度は見たことがあると願いたい。確かに実際に目にした人は少ないかもしれないが、アニメで何度も見たことがある光景だと思う。「葬送のフリーレン」や「鋼の錬金術師」、「進撃の巨人(AOTの名で海外では親しまれる)」など、例を挙げると枚挙に暇がないが、多くのアニメでこのような風景を見る。また、今日の異世界系アニメでもよく目にするものだ。例に挙げた三つは、海外の最大級のアニメファンが集うプラットフォームである「My Anime List」では、それぞれ1位、2位、5位の評価を全アニメの中で得ており数字上でも人気の高さが窺える。これらに共通することは、海外の風景が美麗な作画によって事細かに表現されている点であり、おそらくこのことが海外人気を得た一つの要因だと推測する。海外で人気のアニメには、大きく分けて二つのジャンルがあると思う。一つは日本の伝統文化を踏襲したような、古典的なもののような日本らしさが十全に感じられるアニメ、そしてもう一つが海外の人々が身近に感じられるような、どこかノスタルジックを味わえるようなアニメである。今回は、一つ目の方には悉に言及しない。人間誰しも共感できるものには引き寄せられてしまうことは否めない。対人関係でも然り、日本好きな人と英語で会話するのと、一般の現地の人と英語で会話するのでは難易度も楽しさも異なってくるだろう。それと同様に、アニメでも見る気が起こるまでの一時の感情の揺れと、継続して視聴するモチベーションというものがそれらにあたるだろう(ちなみに私はこれを導入率と継続率と呼称している)。これらが非常に高いアニメが優秀なアニメと言うことができ、例に挙げたアニメらはよく当てはまる。おそらく現地の人々が馴染める雰囲気を、作品から感じやすいのだと思い、それは先にも記述したように今日見たあの景色のようなものが、作品で丁寧に扱われていることに起因するのだと考える。

 飢饉船ツアーに参加し、前日に詰め込んだ概要とともに移民の理由と実状に迫ったが、ここでも「移民」というワードが、大きくアニメに、特にここでは「進撃の巨人」に関わってくる。ヨーロッパは地形的に他国と多く隣接し、気候も違えば経済状況も違うために、移民というものが身近であろう。アイルランドでも彼らは移民する側であり、飢饉によってアメリカ、新大陸へと逃れて行った。「進撃の巨人」の作中でも歴史が語られ、「エルディア人」という一言で言えば特殊な人種が、難を逃れるために大陸とは別の島に移民して行った。そして作中の現在では、「エルディア人」と他の人種の間でヒエラルキー的な問題が発生しており、作品の大きな鍵を握っている。ヨーロッパ史においても移民とそれに伴う差別的な問題は切り離せないだろう。

 こうした地理的、歴史的な背景の共感と理解が進んでいるために海外で売れている。逆を言えばこうした複合的な作り込みがなければ心は掴めないのだろうと思う。

飢饉船はこんな感じの船らしい。

2年6組 髙橋孝明